「うれしい悲鳴をあげてくれ」いしわたり淳治(著)

年末からこの休みにかけて寝る前のベッドの中の友だった「うれしい悲鳴をあげてくれ」について。タイトルがすごく素敵。

本書との出会い

高校大学の時の友達と飲んだ帰りに渋谷のTSUTAYA書店に酔い醒ましに立ち寄った際に購入しました。

おしゃれですよね。渋谷のTSUTAYAの6階7階。お店にいるお客さんも若いおしゃれな方々ばかりですし。そんな雰囲気の中で「わたしだって東京在住歴4年目だし!もう都会っ子ですぜ。」と息巻きつつ購入したこちらの本。

いしわたり淳治さん。詳しくは知らないが元バンドマンで(スーパーカー)今は作詞家やプロデューサー。チャットモンチーや9mmのプロデュースを行なっていてなんとなくイケてる世界のかっこいい人というイメージを持っていました。本を書いているのは知らなかったです。多才だなあ。 「かっこいい人が書いているかっこいいタイトルの本読みたい。」もう多分すごく自分の中のサブカルのツボがぐいっと押されちゃったんだと思います。(酔ってるね)

本書の好きなところ

内容は、軽く読みやすい文体で「こいつ毎日こんなことばっか考えてるのか」と苦笑いしたくなるような妄想話っぽい、でもこの人の頭のなかもっと観てみたい!ついつい引き込まれるようなエッセイとショートショートの短編集。 独自の感性を随所に散りばめられた独特の世界観で、感性が若い。世界は自分が中心で動いていた10代の頃を思い出し少し照れてしまう、そんなエネルギッシュさを感じました。

わたしは割と妄想癖のあるタイプで、小さい頃は「明日学校の帰り道に芸能事務所からスカウトされて、突然東京に行くことになって、安室ちゃんと一緒にMステにでて…あーどうしよう!どこでスカウトさんが見てるかわかんないからお歌でも口ずさんどくか。」みたいな今思い返しても、顔着火ファイヤーしそうなお花畑野郎でした。 今でこそ一般社会に馴染める仮面をかぶって生活できるようになりましたが、三つ子の魂百までです。 芯に残る妄想癖は完全に消え去ることはありません。

この本を読んでわたしは思いました。 いしわたり淳治さんもまあまあ妄想癖やばい。 いや、まあまあとか言ったらあかん。だいぶやばい。やばいやばいやばい。

だって夢と現実の区別がつかん話とか普通にしてるよ。やばいやん。

そんな思い切ってメーターが振り切れたような独自の感性が詰まった短編集。 散々やばいって言いましたが、妄想癖なんて多かれ少なかれ誰もが持っているものだと思うんです。

「わたしもそんなこと思ってた!」 そんな風に感じられるストーリーが読む人によって選んで共感できる、そういう楽しみ方ができるのが本書のよいところではないかなと思いました。

「ポケットの中から生まれた男」

わたしが1番好きだったのは、2章エッセイの「ポケットの中から生まれた男」

本書は音楽雑誌ロッキング・オン・ジャパンに定期掲載されていたコラムを単行本化したものなのですが、そのコラムのタイトルであった「Opportunity & Spirit」はNASAの火星探査機から名前をとったそうです。 粋な名前の付け方に共鳴し、つけたタイトルと対比させあまり思い入れのない付け方をされたご自身のお名前についてのエピソード。 自虐的な笑い話ではあるのですが、まとめ方に愛情があり、これまたこちらも粋だなあと感心させられました。

まとめ

たくさんの小噺(とたんにおしゃれ感がなくなる言い方…w)があるので、飽きたら読み飛ばしつつお気に入りのひとつを発掘する、そんな自分だけの宝物感が味わえる本でした。

同じく読まれた方がいらっしゃれば是非お好きなストーリーについて語ってくださいませ。

うれしい悲鳴をあげてくれ (ちくま文庫)

いしわたり 淳治 筑摩書房 2014-01-08
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by ヨメレバ